『吉村昭と歴史小説の世界』講演を聴講して

マーク内田

2012年02月23日 10:47



昨日2/22は、第2回目の講座が開かれました。


(第1回目は2/8聴講済み

今回の講義は、前回よりいっそうと深みを増した内容でした。

吉村昭や司馬遼太郎はもちろんのこと、太宰治と松本清張は同い年生まれであることや

舟橋聖一の晩年は盲目になられたこと。

新田次郎作品『 八甲田山死の彷徨』作品に対し、吉村昭も資料を準備していたが執筆を断念したり、

司馬遼太郎は大阪外国語学校蒙古語部卒であったので、チンギス・ハーンを書きたかったが、

既に、井上靖が『蒼き狼』を発表していたので、司馬はそれを断念した。

とかの、編集者和田氏ならではのお話で楽しい時間を過ごせた講義でした。

また、講演の最後には、出生地である荒川区日暮里から、

吉村昭記念文学館準備室の学芸員からのコメントがありました。

5年後を目指し、『吉村昭記念文学館』創設の予定があることの発表でした。

吉村昭の作品は(()内は読後済み)

歴史小説(桜田門外の変、生麦事件)、

戦史小説(戦艦武蔵、陸奥撃沈)、

実録小説(三陸海岸大津波、高熱隧道)、

エッセイ(史実を歩く、史実を追う旅)、

純文学作品(冷い夏、暑い夏)と多岐に亘った内容であるが、

彼の作風は、ドキュメント小説(妻の津村節子はこのボキャブラリーを好んでいない)といえるが、、

これまでに存在した多くの実資料のみならず、自らの足で取材・収集した実資料を積み重ねたもの

(史実を追う旅、史実を歩く)がその原点となっている。

彼には多くの兄弟(九男一女)に恵まれ、八男として生まれた昭は、

父母や長男、三男、九男そしてご本人の全てを”癌”で亡くしている。

特に、2歳年下の九男・広志の看病生活を綴った純文学・私小説作品『冷い夏、暑い夏』には、

自らの肺炎に伴う肋骨切除手術の壮絶な体験を重ねた表現力を垣間見る。

この2回に亘る講演をされた立川在住の元文藝春秋社編集者の和田宏氏にお礼を述べます。

この企画を作られた”たちかわ市民交流大学市民推進委員会”担当者の皆様に感謝いたします。


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